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EVで大損したフォードの株価が、なぜか大暴騰。
普通に考えれば、EV事業で巨額損失を出した自動車メーカーの株価が上がるのは不思議です。しかし今回フォードが評価された理由は、EVそのものではありません。
ポイントは、EV向けに用意していたバッテリー関連インフラを、今度は「定置型蓄電池ビジネス」に転用しようとしていることです。
Ford Energyは、Ford Motor Companyの完全子会社として立ち上げられたエネルギー貯蔵事業で、電力会社、データセンター、産業向けに大型のBESS、つまりBattery Energy Storage Systemsを供給する事業です。EDF power solutions North Americaとの5年契約では、年間最大4GWh、合計最大20GWhの蓄電池システムを調達できる枠が示されています。
20GWhという数字は、1台あたり73kWhのMustang Mach-Eに換算すると、約27万台分のバッテリー量に相当します。Mach-Eの米国販売が年間5万台程度という規模感であることを考えると、電池だけを大口顧客にまとめて売るという構図は、かなり大きな意味を持ちます。
ただし、これはまだ「EVの損失を取り戻した」という話ではありません。EDFとの契約も、すぐにフォードへ大金が入ったというより、2028年以降の将来供給枠という性格が強いものです。つまり株価が上がった理由は、実績利益ではなく、「EVで余ったバッテリー投資が、AIデータセンターや電力インフラ向けの蓄電池ビジネスに化けるかもしれない」という期待です。Reutersも、FordのEVプログラムの評価損後に、ケンタッキーのバッテリーインフラをエネルギー貯蔵システム向けに転用する流れを報じています。
一方で、蓄電池市場は決して楽な市場ではありません。Tesla Megapack、BYD、CATL、Sungrow、Fluenceなど、本職の強豪がすでに激しく競争しているレッドオーシャンです。Ford Energyに勝算があるとすれば、世界最安の電池メーカーになることではなく、米国製、北米供給、電力インフラ向けの調達安心感、そして地政学的に中国依存を避けたい需要を取れるかどうかです。
つまり今回の話は、「EVで失敗したフォードが、蓄電池で完全復活した」という単純な成功物語ではありません。
むしろ本質は、
EVで勝てなかったフォードが、余った電池投資を使って、今度はAI時代の電力インフラ市場に参入した。
そして市場は、その未来の可能性を先に買った。
という話です。
フォード株の上昇は成功確定ではなく、期待の先取りです。
果たしてFord Energyは、EV敗戦処理の延長で終わるのか。
それとも、本当にフォードの新しい収益源になるのか。
今回はその背景を解説します。
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